第三章・「別離」その15
進めぇー進めぇーススメ、ススメ、進めー
2000年・夏、二人で過ごす最期の夏休みが終わりました
週末には、また妻の待つ実家へ通います
そして、車椅子に乗せた妻と午後の散歩に出掛けます
細腕を車椅子から振り上げる
車椅子を押す「進めー、ススメー・・・」の掛け声に
妻は拳を振り上げ、僕の声援にこたえます
いつの頃から、これが妻の散歩の応援歌になりました
大輪はうつむきかげん暮れる夏
8月が終ろうとしています
猛暑だったこの夏にも力がなくなってきました
転移した癌細胞はゆっくりと妻を蝕んでいきます
s_yamamo@