第三章・「別離」その7


誕生日生きてる私が贈り物

気が付くと僕の誕生日は妻の胸水を抜き取る入院で過ぎていました
『今年はプレゼントいいよね、私が生きているンだから。』
妻から僕へ、最期の誕生プレゼントです


一本の木に集まりて蝉の鳴く

JR大塚駅を降りて実家までの途中、高層のマンションが出来上がりました
アプローチに植えられた一本のプラタナスから蝉の声が聴こえてきます
2000年夏、この年は殊のほか暑い夏になりました


竣工のマンションの壁蝉の声

高層マンションのすぐ上にギラギラの太陽が照りつけます
「生きていることを誇示する蝉の声」
出来たばかりのマンションの壁に反響しています




s_yamamo@