第三章・「別離」その6
アンペック苦しみ一つ忘れさせ
アンペックは主治医に処方していただいたモルヒネです
痛みがなくても時間をおいてきっちりと使用します
痛みさえなければ冷静に夫婦の話もできます
受話器あて夫の声にほっとする
実家で療養する妻からは決まった時刻に毎晩、電話があります
声を聞くだけで彼女の病状が僕には分かります
妻の声を聞いてほっとしているのは僕の方かもしれません
生きている証し痛みもいとおしく
『痛みがあるのは生きている証拠』と妻は前向きです
気持ちは前向きでもやっぱり痛みは襲ってきます
せめて週末だけは癌細胞もお休みしてください
s_yamamo@