第一章・「再発」その46


加療から初めて一人東北線

横浜駅から実家のあるJR大塚駅まで僕は東急東横線で渋谷に出て、山の手線に乗り換えます
妻は京浜東北線で田端まで行って同じホーム、反対に入ってくる山の手線に乗り換えます
一人で妻はコンサートからの帰りもそうして実家に戻りました



老いた母一人っきりで鬼は外

妻がこの病気になるまで子供ない僕たちは僕の母親と三人の静かな生活でした
来る日も、来る年も、同じように暮らしていくものと思っていました
週末の実家から戻り、玄関に足を踏み入れ豆が潰れる音でこの年の「節分」を知りました



夫への三年振りのラブレター

三年前は、告知を受け検査入院の個室で失意の中、僕に宛てた手紙でした
この間に告知、癌研への転院、摘出手術、胸部放射線、頭部放射線、再発、二度の抗癌剤・・・
三年前の手紙とは比較にならない、精神的に強くなった妻からのラブレターです



s_yamamo@