再発・「毒のあとさき」その十九


江藤氏のちょっとちがうと妻ぽつり

この年の7月21日、文芸評論家の江藤淳氏が妻の死や自らの病気を苦にして自殺しました
読書は趣味という実家の母が求めた氏の著書「妻と私」を読み終えた妻の感想です
「ヤマは死なないよね」、自殺は認めない妻の言葉が、今も僕の耳に残っています



毒にでも薬にもなる放射能

妻と穏やかに過ごしてきた9月も終わろうとする時、大きなニュースが飛び込んできました
東海村のウラン加工施設で起きた「被曝事故」です
「放射線を照射するときはね、技師さんたち、部屋から逃げるように出て行って、私一人だけ」
この「句」は肺へ、脳へそして後日の骨へ、放射線照射治療を受けた妻の実感です



秋風に誘われるまま地蔵まで

妻の実家から10分程のところにある「巣鴨地蔵」は散歩の定番コースです
週末が来ると泊りがけで妻のもとへ、そして土曜日の午後は散歩と決めています
その週の出来事から遠い昔のこと、二人が知る友人のこと、病気のこと、将来のこと・・・
僕の腕に手を回し、おしゃべりしながらのそぞろ歩きに、「私たち、老後の夫婦みたい」と
嬉しそうな妻のひと言です



s_yamamo@