再発・「毒のあとさき」その九


内科医に届けられない胸のうち

再発が確認されてから外来は執刀医のT先生から内科医のK先生へ
T先生とは軽口も交わすこともできた妻も代わったばかりのK先生とはもう少し時間が必要でした
加療入院中は妻の病室に何度も足を運んでくださいますが、「吐き気」だけは改善できません



この辛さ「心配ない」と医師の言う

反対の健康な肺に転移が認められ、外来でCTによる経過観察している頃のことでした
「いま抗癌剤を使うのは居るかわからない敵に向かって機関銃を打ち込むのと同じ」
「それは暗闇のなかで刀を振り回すようなもの」「やるときはエース級を登板させます」
内科医のK先生はいつも「たとえ話」で僕たちに分かりやすく説明してくださいます
そして、その副作用もエース級・・・「内科医の吐き気で死んだ者のなし」



いつまでも中身の減らぬマグカップ

抗癌剤の加療中、水分摂取は欠かせません
ベッド脇のサイドテーブルに置かれたままのマグカップ
妻はただじっと見つめるだけです



s_yamamo@