再発・「毒のあとさき」その七


「戦争」と思えばあの日の執刀医

手術を前に家族が呼ばれ執刀医から説明を受けました
ひと通り話が終わると家族の顔を見渡し「これは戦争ですから」と執刀医の力強い一言
その時は実感がありませんでしたが、再発・転移・放射線・抗癌剤・・・・・
まさに「戦争」そのものです



二回戦胃も裏返る副作用

部屋の隅に妻のバッグ、主を失い今は所在なくぽつんとしています
友人に会うとき、実家に行くとき、病院へ行くとき最後まで彼女が愛用していたバッグです
そのバッグに括りつけられている小さな黒いポーチ、いつ襲ってくるかわからない吐き気に備え
中にはたくさんのビニール袋にティシュ、バンダナに数枚のハンカチ、今もそのままです



内科医の吐き気で死んだ者のなし

吐き気は主治医に訴えても取り合ってはくれません
じっと耐えてただ通り過ぎるのを待つだけです
「こんな思い、ヤマにはさせたくない」と言っていた妻の言葉を思い出します


     

s_yamamo@