再発・「毒のあとさき」その五


母が娘の車椅子押すそろそろと

化学療法は一週間の入院加療で「ワンクール」妻の場合これを二度受けることになります
一回目の加療が済んで退院には実家の母が車椅子をゆっくりと押して家路に・・・
副作用の辛さを癒すように路地に咲き始めた紫陽花たちがやさしく妻を迎えてくれました
「寄り添って囁きあって咲く紫陽花」



揺れる椅子妻の帽子に初夏の風

車椅子を押す僕からは広い帽子のひさしで妻の表情はうかがい知れません
僕にはメッシュの帽子が初夏の日差しを受けとても眩しく見えました



癌研の坂はくるりと後ずさり

病院の脇には緩やかにカーブを描きだらだらと続く長い坂があります
妻の実家と病院を何度か往復するうちに僕の車椅子の腕前も上手になってきました
この時は将来この車椅子が不可欠なものになろうとは露ほども思っていませんでした


     

s_yamamo@